ベルギー独特の自然発酵ビール
ランビックとは、ベルギーの首都、ブリュッセルの近郊のパヨッテンラントと呼ばれる地域で主に造られる、自然発酵と長期間の熟成によって独特な強い酸味を持ったビール。
ランビックというジャンル名は、「レンベーク」という地名から名付けられたとされ、この地域に流れる「ジネ川」付近に生息するとされる野生酵母によって発酵が行われる。
リンゴの外果皮の野生酵母で発酵させた伝統的なシードルにも通じるものがある味わいです。
若いランビックと古いランビックをブレンドしたグーズやフルーツを加えて発酵させたものなど様々な種類が存在します。
別の話であるがゼネ川はこの地域ではZinneジネ川と呼ばれ、その地域で創業した現デ・ラ・セーヌ醸造所(現ブリュッセル)のジネビアにも描かれています。
ランビックの特徴的な醸造
1.ランビックは大麦麦芽と小麦、香りや苦みを飛ばすために2~3年寝かせた古いホップを用いる。
雑菌による汚染のリスクを抑えるために冬場のみ醸造が行われる。
2.煮沸した麦汁を「クールシップ」と呼ばれる浅い冷却槽に麦汁が流され、一晩放置することで冷却する。
屋根や壁には穴が開けられ風が吹き抜けるようになっており、木材にも野生酵母が住み着いているとされる。
3.発酵の始まった麦汁を木樽に移し、1年~3年の間熟成させる。
樽の内側に住み着く野生酵母によって、麦汁の糖分は熟成が長くなるほど少なくなり独特な香り(埃っぽい、獣くささなど)が増す。
4.ランビックの特徴的な醸造に深く関わる野生酵母の代表的なものとして、以下が挙げられる。
・ブレタノマイセス・ブリュセレンシス(Brettanomyces bruxellensis)
・ブレタノマイセス・ランビクス(Brettanomyces lambicus)
ランビックのスタイル
ストレートランビック
熟成させたランビックの「原酒」。炭酸ガスによる発泡はほぼない。
ベルギー国内では流通することもあるが、基本的に海外への輸出はされていない。
グーズ(Geuze)
流通の多い最も一般的なランビック。
熟成の短い「若いランビック」と、熟成の長い「古いランビック」をブレンドし、ボトリング。
瓶内での二次発酵によって炭酸ガスが閉じ込められ発泡している。
フルーツランビック
ランビックにフルーツを加えたもの。
熟成中のランビックの樽内に果実を丸ごと漬け込むものや、果汁だけをブレンドするなど手法は様々。
原料フルーツとしては、サワーチェリーや木苺が代表的。
ファロ
ランビックにキャンディシュガー(氷砂糖)を加えて甘さを足したスタイル。
元々はビアカフェで客が自分の好みに合わせて氷砂糖を加えて飲むものであった。
現在はそういった提供をしているビアカフェはほとんど無く、一部の醸造所が近隣のビアカフェに少量生産して出荷していたり、ボトリングされているものも少ないが存在する。
飲むタイミング、ペアリング
暑い時期には一杯目におすすめ。しかし、グーズなどは酸味がきつく味わいが初心者向けではないので、甘みのあるフルーツやファロなどからランビックに触れてもらうのが良い。
ハイアルコールなビールの合間にリフレッシュさせるのもおすすめ。
おすすめのペアリングは、シャルキュトリー、サラダ等の前菜。軽く煮込んだ料理などにも合わせやすく、ランビックで煮込むなど料理にも使われることが多い。
フルーツランビックはデザートとの相性が良い。