デュポン醸造所訪問記

今日ご紹介するのはこの時期に飲みたくなるセゾンビールで有名なDupont(デュポン)醸造所。
こちらの醸造所は毎月第一土曜日の午前中に醸造所ツアーを開催している。
そして有り難いことになんと3言語対応(英語、フランス語、オランダ語)!
私は11時半から始まる英語のツアーを予約して出陣してきた(予約すると12.5ユーロ、予約しないと15ユーロ)。

私のイメージでDupont醸造所といえばセゾンビールでしょ、というイメージだったんだが、どうやらMoinette(モアネット)がこちらのイチオシのよう。
醸造所に着くと、大きなMoinetteの看板が至る所にあった。
Moinetteはベルジャンエールで、ブロンド、アンバー、ブルーンの3つのラインナップがある。

ちなみに私が楽しみにしていたセゾンビールとはどんなビールかと言うと…
まず「Saison(セゾン)」とはフランス語で季節という意味。英語ではSeasonだ。
「セゾンビール」と言うとなんだかモヤッとしていて若干定義が難しいのだが、上面発酵のエールで、アルコール度数は低め、ホップが強めで少し酸味のある夏にぴったりの爽やかなビール。
結構レアなビールなので普通のビアカフェにはあまり置いてないし、置いてあったとしても、まず「Saison」でカテゴライズはされていない。
色が黄金色なので、あるとしたらブロンドビールのカテゴリーに入っていたりする。
でも名前は「Saison」を冠しているので、見つけたらぜひ飲んでみて欲しい(たまにセゾンと謳っているけれどセゾンビールじゃないこともあるが、Dupont、Silly、St. Feullienあたりを選ぶと確実だ)。

このビールは、元々、ベルギーの一大穀倉地帯であるエノー州で、繁忙期の夏にやってくる季節労働の農民用に提供されていたビールだった。醸造は冬の農閑期。夏まで持たせるために、保存料としてホップを沢山使っているためホッピーなビールに仕上がる。また、農作業中に飲むものなのでアルコール度数も低い。当時は「うちの農場はビールを○リットル出すよ」、なんて言って農民を呼び込んでいたそう。夏の農作業中にこのビールを飲んだらとても美味しそうだ。

醸造所に着くと、醸造学を勉強している学生さんとオーナーの娘さんがガイドをしてくれた。
参加者は私とアメリカで家族が醸造所を営んでいるというニューヨーカー。
おかげで、着眼点が面白かった。
ビールの基本的な知識に、Dupont醸造所のあれこれを織り交ぜて説明をしてくれてなかなかいいガイドさんであった。

Dupont醸造所はワロンのエノー州に位置する醸造所で、1844年から醸造と農業を営んでいる歴史のある醸造所。
現在のデュポン一族になったのは、1920年からで、それ以来、家族経営の小規模かつ伝統的な醸造を続けている。
従業員は全部で27人で、醸造に携わる人は10人ちょっとだそう。
規模は小さいながらも、現在のオーナーは設備投資をして、今風に醸造所をリニューアル、さらにBio(有機)の認証を受けたビールをベルギーで初めて醸造したり、海外向けマーケティングに成功、アメリカを始めとし、日本などの海外に生産量の40%を輸出しているそう。
ベルギーの醸造家の中でも注目されており、「世界でもっとも優れた醸造所10選」にも選ばれたとか。

醸造所ツアーは所要時間は約1時間で、醸造工程順に回って、最後にショップとカフェに寄って終了だ。
ショップでは全商品のラインナップを説明してもらい、Dupont醸造所の有名なビールの6本セットのプレゼントパックをGET。
そして、最後は立ち飲みのBarスペースで試飲タイム。
好きなビールを3種類選んでおつまみにはDupont醸造所のチーズ(Moinetteのウォッシュタイプチーズ)を貰える。
面白かったのはSaison DuponとスペシャルなSaison Dupont (Cuvee Dry Hopping)の飲み比べ。
レシピはほぼ同じなのだが、スペシャルな方は、ドライホッピングの工程が追加されている。
これはものすごい顕著な違いで驚きだった。
もう鼻を少し近づけただけで、ホップの爽やかな香りがくる。
ドライホッピングってこんなにも威力が強いのかと興味深いテイスティングとなった。

鍵谷記

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